1/31/2012

デフレ脱却には公的需要を国債発行・日銀引き受けで

日銀の会合議事録の公表があって、2001年当時の速水総裁と竹中経済財政相らとの「インフレ目標」についてのやりとりが明らかになった。日銀はそのときも、いまもそうだが、インフレ目標設定には消極的だ。
 ただ、米国など主要国に比べ、円の流通量が少ない(増えていない)ことに日銀は無頓着だ。このことが円高の唯一の原因で、デフレの一因であることは小学生でもわかる。円高デフレ共に円の価値が高い、すなわち、流通量がものに比べ少ないからだ。しかし、紙幣を刷ってヘリコプターからばらまくわけにはいかない。日銀が市中の国債を買いましてその対価となる新札を市中に出すこと(買いオペ)だろう。結果として、国債の利率が高くなり、少しはインフレになるだろう。
 しかし、デフレはそれだけでは収まらない。総需要の不足が主因だから、政府が公的需要を積みますことが必須である。その財源は国債を発行してまかなう。それを日銀が引き受ける、ということになる。
 それではハイパーインフレになる、と心配されるが、インフレ目標というのは、ハイパーになる前に止める、ということができなければやってはいけない。どうも、議論が堂々めぐりになった。

1/30/2012

2075年の全体像を説明しないと「一体」改革にならない

社会保障と税の一体改革の「一体」とは、「まずは出るを制して、のちに入るを図る」「順序」の意味だろう。給付規模がバラマキになりがちな社会保障の範囲を限定してからその財源たる徴税規模を決めなければ話にならない。
 民主党はマニフェストで最低保障年金を主張している。それが2075年の遠い先の話になるにせよ、そのときに消費税率はいくら必要なのかをまずは説明するのが「一体」の意味だ。もちろん、今すぐにではないだろうから、それにいたる中間の目標と年度を決めて、そのときの社会保障水準はどうなり、それに必要な税率は10%(+5%)だ、とするのが今回の法案説明となる。
 その全体像に関しては、年金医療介護の支給は「足し」になる程度でが文痴の考えだ。
 

1/26/2012

イザベラ・バード「朝鮮紀行」の公平な視点

英国婦人のイザベラ・バード(改姓ビショップ)は明治初期の日本に旅行し「日本奥地紀行」を著している。それとの比較もあり隣国への「朝鮮紀行」を読んだ。
 全部で37の章にわたる大部だが、最後の章「最後に」では、「朝鮮にはその内部からみずからを改革する能力がないので、外部から改革されなければならない」と結論づけている。明治期の日本の進んだ社会体制との比較もあったろう。日本には明治に飛躍する素地としての江戸時代の蓄積があったが、李氏朝鮮の500年では両班(やんばん、支配階級)の害悪が社会をむしばんでいた。結果として、日本がその大本である清国を日清戦争で追い出し、外部の改革者としての役割を果たしたのだろう。
 そのあとの日韓併合時代での日本からの影響も戦後の韓国の飛躍「漢江の奇跡」のもととなったといわれるが、残念ながら、そのときにはイザベラ・バードのような第三国からの公平的な観察者はいない。

1/25/2012

民主党は野党時代の非協力を謝罪してから

野田首相は通常国会冒頭施政方針演説で福田、麻生もと首相の演説内容を引用した。ねじれ国会なので、野党にも協力してほしい、との目的からだ。自民党政権もねじれ状態で苦しんでいた時、野党民主党に協力を依頼したではないか、との皮肉的理屈だ。
 しかし、野田首相は自民党政権時代の民主党の非協力ぶりを謝罪してから逆の立場になった自民党などに呼びかけるべきだった。立場を替えて、お互い様でしたと、ノーサイド宣言をすれば立派だったのに。
 それと、09年マニフェストの総括を自らすべきだ。

1/24/2012

大阪都より道州制がこの国の形を変える

大阪市の橋下市長は自分の職分である大阪都構想だけをやっているのかと思ったら道州制の主張もし始めた。
 道州制は地方分権のテーマではなく、国を道州に分割する、国家の大構想だ。日本国を明治以来の中央集権国家から、現在の政治経済の環境に合った道州国家に分割し、地域の自主的な意志が発揮できるようにするというものだ。それでこそ、近々予想される衆議院選に対し、大阪維新の会から立候補者を揃えるという、国政に意欲をもった政治テーマにそれがなったのだろう。「大阪都構想」だけで国政というのは矮小すぎる。

1/23/2012

年金医療介護の支給は「足し」になる程度で

税と社会保障の一体改革の議論で、一体というにしては前後者ともに全体像が見えない中で、消費税のとりあえずの税率へのアップと社会保障はとりあえずの繕いだけと「とりあえず」の議論だけとなっている。
 社会保障の改革の全体像を先ずは示すべきだ。それら改革のすべてをいますぐ実行に移す必要はないが、プログラムだけは明らかにする。文痴はその改革の基本視点は「保険」としての性格に戻るべきだと思う。英国など北欧で「ゆりかごから墓場まで」とのキャッチフレーズで「丸抱え福祉」となっているが、我が日本では「足らざる所を補う」(保険的性格)ことにすべきだ。
 医療保険は全世代で必要だが、本人負担の率(30%程度)をもっと増やす(50%とかに)したらどうか。その上で、高額医療費は全額に近く補給するのだ。
 介護保険は老齢者主体だが、軽度の要介護に対しては現行の10%負担をもっと増やす。重度のもので毎月の負担が高額になる場合は負担限度額を設ける。
 年金は「基礎年金だけを公的年金に」で書いたが、自己で積み立てた老後資金の不足の足しにする、という考えで、生活費全額を支給することにはしない。

1/22/2012

世界の食糧はこれからも供給過剰

川島博之「作りすぎが日本の農業をダメにする」を読んだ。そのなかで、世界的に食料生産は供給過剰気味で、飢餓で問題となっていると報道されるアフリカのサハラ以南地区でも同様だという。人口が増えているのは食料が十分な証拠だ。飢餓で問題になっているのは政治の貧困で内戦状態になっている一部の地域に限られる。いまアフリカのために必要なのは食料援助ではない。援助はアフリカの農民をさらに貧困へと追いやってしまう。必要なことは先進国がアフリカの農産品を輸入してやることだ。
 同様の指摘を「援助じゃアフリカは発展しない」で読んだ。

1/17/2012

LNG火力と原発の費用差額は電力料金に自動的に転嫁してよい

東電が四月から企業用大口電力料金を17%値上げする予定だ。理由は福島第一原発の関連でほかの原発も止まり、かわりにLNG火力発電などを増運転することによる燃料費増が莫大となることだ。
 やむを得ないのではないか。燃料費に関しては原油、LNG、石炭の価格変動に追随する燃料費調整制度がすでにある。類似して、原発の運転費とLNG火力の燃料費を含む運転費の差額を自動的に料金の改定につなげることを考えてよい。原発が一部運転再開になれば、上がった料金をその都度下げることになる。

1/16/2012

「TPP亡国論」はTPPに関する部分のみ不可解

中野剛志「TPP亡国論」を読んだ。TPP以外の経済貿易に関する論点もあり、それらは説得的だ。だが、TPPになぜ参加してはならないのかのみが説得的でない。既参加九ヶ国のすべてが日本とは利害を異にし「多数決」で負けるから、不利な結果に終わるとしているが、多数決ではなく、最後の最後は個々の国(議会)で批准されなければ協定として成立しないだけだ。日本は構成国のなかでの経済大国だからその意向を無視しては進めないだろう。
 それよりも民主党二代前の鳩山元首相が積極的だった東アジア共同体構想に添った経済協定の日中、日韓、韓中の二国間枠組みあるいはASEAN+3(日中韓)の中国主導のものから自由主義各国の環太平洋枠組みへ日本を誘い出す政治的な意味合いが強いと感じる。TPPは対中国包囲網だ。

1/15/2012

国債の格付けは市場がする

フランスなどユーロ通貨圏内の国の国債が格下げになった。S&Pなどの民間格付け会社の評価だ。その連想で日本国債のさらなる格下げを心配する向きがある。
 しかし、日本国債と言っても債券の一つだ。債券の市場での評価は時価すなわち利回りだ。日本国債の十年ものの利率が1%程度の低い水準になっていることこそその評価が高いことを示している。イタリア国債は利率が上がった。それは格付けが下がったということに他ならない。
 米国格付け会社の無能、もご覧ください。

1/12/2012

放射能でもnimbyな悲しい日本人

原子力の平和利用として原子力発電が始まって半世紀になる。しかし、その運転に伴い発生する放射性廃棄物の最終処分方法が確立していないところから「トイレのないマンション」と揶揄され、致命的な欠陥扱いをされている。
 しかし、最終処分を邪魔しているのは誰なのか?今回の福島第一原発からの飛散放射性物質の除染には、最終的にはどこかに処分しなければならないが、いわゆる風評的な忌避からいかなる放射性物質も引き受けないという地域の声(エゴ)が形成されている。高濃度のものはガラス固化体にして地下岩盤深くに処分し、低濃度のものは管理型処分場に埋め立てる、という科学的に信頼できる方法を受け入れるべきだ。
 今回の震災では日本人の助け合いの精神が賞賛された。しかし、放射性物質あるいは廃棄物ということになると、nimby(not in my backyard・・・自分だけは損したくない)になる日本人が悲しい。

1/07/2012

東電は一度国有化し、その後、発送電分離、民間あるいは国営に

 文痴は昨年9/26に「東電は公益企業的な業務を地域独占で実施している。だから、株式会社の形態をとれるわけがない」とし、国営か独立行政法人にすべきだと主張した。ところが、今日のニュースで、政府が東電の債務超過を補う手段として普通株を50%以上取得する考えだとしている。国有化して電力事業の発送電分離などの懸案を解決するつもりらしい。
 この行きつく先だが、送配電は一社独占である必要から国営とし、発電は民間各社の競争に任せる。電力のベースロードを担いリスクが大きい原子力発電所は国営とするのが理想的ではないかと思う。   

1/05/2012

解散総選挙は民主党のためにこそ必要だ

自公などの野党が与党民主党に消費増税前の解散総選挙を要求している。09年の政権交代時のマニフェスト違反ではないか、との理由からだ。それは与野党間の信義からというより、民主党内で政策が一致しないことへの忠告と見た方がよい。一枚岩となれない民主党との協議に野党が乗れないのは当然だ。解散総選挙を経て、改訂されたマニフェストの元、一つの政党として出直してほしい。そうしなければ、政界の漂流が民主党内の不一致のためさらに続くことになる。