10/30/2015

中国の錬金術は為替と土地から

 中国経済は日本の特技だった加工貿易ならぬ組み立て貿易に特化している。技術力がないので、素材、部品は日本などから輸入して、国内の安い労働力で簡単な最終組み立てをして輸出に回す。いままでは労働力人口が過剰だったので、賃金水準が押さえられていて輸出競争力が保たれていた。これからは老齢化と一人っ子政策の弊害があって、賃金水準が漸増していわゆる中進国の罠に陥るものと思われる。
 これまでの間、輸出競争力を保てたもう一つの要因は管理為替水準を低めに誘導してきたことだ。人民元の対ドル水準を低めに管理すれば、輸出競争力が高まる。しかし、それでは国民の所得が対ドル換算で増えないから、いつまでも内需主導の経済にならない。つまり、国民窮乏化の結果、輸出余剰の外貨が増え、AIIBなどの対外投資の余力につながったとも言える。
 また、土地は国有のものだという政策で、農民から二束三文で農地を召し上げ、地方政府が開発後、高い時価で転売することで、農民の富を収奪してきたことが国家の莫大な資金のもととなった。つまりは、中国の錬金術は人民元安操作と土地転売利益、によると言っても過言ではないだろう。なぜあれだけの「爆買い」が政府にもできるのかが不思議だった。

10/15/2015

痛税感を言うのだったら小売店軽減税率方式は?

 軽減税率の適用が2017年4月からの10%への増税時から導入されることが安倍首相の指示で決まった。新国立競技場のデザイン変更のときも首相の最終判断だったので、何ごともいつまでも決まらないで宙ぶらりんとなるよりはよいことだ。
 食料品など生活必需品への軽減税率は低所得者対策と思われがちだが、消費者すべてに恩恵を与えるものだから、複数税率導入の最初になる、と見たほうがよい。低所得者対策だったら、まずは、間接税による逆進性をカバーするため直接税の所得税で対応すべきものだ。所得税は累進性があるからその逆累の程度を調整する、というふうに。または、低所得者だけに還付する方法も種々考えられるが、そのうちの日本型軽減税率方式として考えられたマイナンバーを利用した還付方式(財務省案)が国民の拒否を受けたので、これら還付制度すべてが道連れとなって不採用になった。
 軽減税率にこだわる公明党は複数税率制度を提唱しているのだろう。贅沢品は10%以上の税率をと主張し始めた。なんのことはない、昔あった(贅沢)品目毎の税率制度の復活だ。
 これはこれで、国民の支持を得れば立派な政策だと思う。しかし、流通段階で仕入れ価格にかかる税額を控除して納税するインボイスなどの伝票制度が面倒だ、という声が出ていて、首相もこの作業負担軽減も工夫するよう付言している。
 そこで、最終小売り価格には8%の軽減税率とし、仕入れ価格すべて10%に増税することで割り切ればよいのではないか?小売店の仕入れ価格が半分だとして、それにはすべて10%かかるのだったら、小売店の付加価値(利潤、人件費など)のみ8%の軽減税率とする。上記の計算だと、実質税率は9%となるが、レジでの消費税額は8%表示となるので、痛税感は薄れ、公明党などの政策目標は満足されるのではないか。

10/10/2015

ユネスコという世界化ビジネス

 舞鶴への引き揚げ資料が世界記憶遺産に登録された。あえて言うが、世界で記憶するべきことなのだろうか。もちろん日本国内としては貴重な資料だ。
 登録を決めるユネスコは登録ビジネスで権限をふるっている。世界遺産もそうだ。真に貴重な遺産は登録しなくても貴重なものだ。それをユネスコが商売にした。大した世界遺産でなくても登録されれば観光客誘致に資する。
 このような世界化ビジネスにはFIFAもあげられる。ワールドカップの開催国を決める権限で収賄的行為を疑われている。IOCもそうでないとよいが。一国内機関だっら不正は厳しく取り締まれるが、世界機関だから免れている。
 今回の世界記憶遺産に同時登録された南京の日本軍による虐殺資料も、たいして事実を検証せずに、中国の要求により「ビジネス」をしたということだろう。日本はユネスコに協力をしないに留まらず、このような世界化ビジネスをすべてボイコットしたらどうか。
 話は逆になるが、中国はノーベル平和賞の世界化ビジネスに抗議して、孔子平和賞をでっち上げたのだろう。心情だけは理解できる。

10/04/2015

シリア難民はヨーロッパだけで解決すべき

 シリア難民を世界中で分担して受け入れよう、というのには無理があるのではないか?
 似たような背景で安倍首相が国連で演説したが、主として一部の日本人の間で「人道的でない」として非難の声があがった。
 政治難民(戦争難民とも、経済難民は対象外)は戦地の祖国から一時避難して、戦争が終わって平和になったら帰国する。その避難場所を提供するのが難民引き受けとなる。ほんの一時だったら、隣国のトルコとかヨルダン、レバノンに避難するのが合理的だ。これらの国には受け入れ経費がかかるので、日本は金銭的負担を申し入れている。
 そのトルコからギリシアそして、ハンガリーなどEU諸国に移動する必要はない。最終的にドイツなどに移住したいのは、経済的理由があるからだ。戦乱が絶えず、平和になっても社会が崩壊しているだろうシリアには戻りたくない。新天地のヨーロッパで生活を始めたい、ということだろう。だから、まずは政治難民かどうかは厳格に審査しなければならない。さらには、ドイツまで到達できるのはシリア人のうち英語ができ移動の経費も負担できる金持ちないしエリート層だ。それらの階層だけをシリア社会から引き抜いたら戦後のシリア復興に支障とならないか。良質な移民だけを受け入れればドイツは得する、という考えかもしれない。
 「人道的かどうか」より、受け入れ国として日本が適当かどうかという議論になるべきだ。難民を受け入れるには難民側の意向もある。日本語を習得しなければならないが、世界で孤絶する日本語を学ぶのは困難を極めるだろう。また、一神教ではない仏教、神道の社会にイスラム教徒がなじめるのか、という宗教問題。日本社会に無理なく入れるのは言語が似ている朝鮮民族、漢字が共通な漢民族、さらには生活習慣に共通性がみられる東南アジアまでだろう。安倍首相は難民受け入れ分担地域のことも言っているのだろうと思う。
 さらには、シリアなど中東でたびたび戦乱になるのは、遠因をたどれば、英仏両国のアラブ(イスラム)分割統治の結果だ。ヨーロッパだけでシリア難民(その他のアフリカも)を解決するのは当然のことだ。

10/03/2015

騒いだことを忘れる日本人

 日本人の「絶対」反対というのはそのときだけだ、ということがわかった。「絶対」というからには死ぬまでその主張を変えない、というのが日本語の意味だ。
 マイナンバーが今月から始まる。過去にはこれより小規模の住民基本台帳番号が「絶対反対」された。しかし、反対(首長)の横浜市、国立市とすべて陥落。いまそれよりも広範なマイナンバーに反対するものはいない。
 町中に監視カメラが配置されるようになり、警察の捜査には不可欠な手段となった。これも当初はプライバシー侵害とかで反対を受けたものだ。「悪事を働くときにプライバシーは尊重されなくてよい」という常識が勝った。
 自衛隊のPKO活動にはいまは反対する人はいない。始める当初の国会審議では、今夏の国会騒ぎと同様だった。今回の安保法制も同様の道をたどるであろう。
 TPPが妥結寸前になった。自民党を含み野党が一緒になって「聖域を守れ」という大合唱だった。いま、その声は中国の脅威の前にかすんでいる。貿易交渉だから、聖域を各国が主張したら最初から交渉にならない。お互いに妥協して(国内勢力を説得して)、対中国経済戦略を立てようということがわかってきたのだろう。