7/15/2013

福島事故もチェルノビルと同様、避難し回復後帰還するという通常手法(でよい)

キャス・サンスティーン「最悪のシナリオ-巨大リスクにどこまで備えるのか」を読んだ。巨大リスクは生起確率が低いがいったん起きれば被害は甚大だ。確率が低すぎて、というよりごくまれな現象のため、確率が不確実(わからない)なので、費用便益分析に適さない。そのようなときには予防原則(予備原則のほうが適訳らしい)に従って、対応措置を講ずるのがよいとされるが、リスク・リスク・トレードオフが生ずる恐れがあるとしている。予防原則に従って講じた措置が別のリスクの原因となるからだ。

原子力発電の事故リスクに似ている。事故の確率も被害の程度(便益)も不確実だ。と言って、予防原則に従って原発を廃止すると、たとえば代替発電の石炭火力からは石炭採掘時の人身事故とか発電所からの公害あるいは地球温暖化ガスの排出など、他の大きなリスクにつながってしまう。再生可能エネルギーによる発電だけでは必要電力の全部をまかなうことはできない。原発の持つベース電源機能を火力発電が担わなければならない。電力料金の値上げという国民経済上のリスクも生ずる。

福島事故後、たまたま社会的に注目されたリスクである原子力発電に、費用対効果を度外視して過剰な政策対応をするのには慎重であるべきだ。過去の同種の、スリーマイルとチェルノビルの事故後どう回復しているかも見た上で政策決定がなされるべきだ。福島も含めて、事故があったら避難し、ある期間の後、回復がなされたら帰還する、という通常のリスク回避の方法でよかったのではないか、という考えを増強するものだった。

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