9/30/2009

マニフェストの全部を実行することはない

 今回の衆院選はマニフェスト選挙といわれた。しかし、何パーセントの有権者がマニフェストを見比べて政党を選んだのだろうか?勝った民主党のマニフェストに盛られた各政策への個別の賛同が低いものもあることからも、マニフェスト選挙ではなかったのは確かだ。各党がマニフェストは掲げたが、投票行動はそれには無関係だった、ということだ。民主・自民のどちらに任せたか、という従来型の選挙だったのだろう。代議制・間接民主主義なのだから、掲げたマニフェストその通りに議会活動をされたら、マニフェストだけが一人歩きし議会の意味がなくなる。
 それまで政権党だった自民党はマニフェストに盛り込む政策に現政策からの不連続なものが採用できない。一方、野党だった民主党はそれこそ政権交代のためには、それこそ与党と逆のことを書くしかない。しかし、政権を取ったあと、それでは問題となる。政策間の一貫性に欠ける場合があるし、個々の政策で反対が多いものを強行はできないだろう。高速道路無料化政策ではその趣旨から軌道修正がされつつあり、試行錯誤を繰り返しながら、最適な「無料化」(一部有料)を進めるとしている。
 前原国交相が述懐したように、「有権者はマニフェストのすべてに賛成したわけではない」のである。民主党もそのことに気づいている。
 今後、もしマニフェストの選挙としたいのなら、政権奪取の可能性のある野党(二大政党のひとつ)のほうも一貫性のある政策群を組み立てる必要があるのではないか?万年野党は個々の政策に反対を唱えるのが仕事だ。これはマニフェストとは言えないが。

モラトリアム法の「政策」には「対策」あり

 亀井金融相が中小企業資金対策のため、金融機関へのモラトリアム法案を準備している。貸し剥がしが横行し、返済猶予があれば立ち直る可能性がある中小企業の倒産があるからだという。
 文痴はそれは違うと思う。金融機関だって商売だから、将来性がある中小企業はお得意さんとして育てなければ、その金融機関は貸出先が少なくなり先細りになってしまうだろう。一律に中小企業金融を助ける、という発想がおかしい。個々に判断すべきで、それは個々の金融機関の商売そのものだ。
 それよりも、金融機関の不良債権への金融庁の評価が一律・機械的なのを糺すべきだ。その「政策」が杓子定規なので、「対策」として各金融機関は一律に貸し剥がしをしているに過ぎない。モラトリアム法という「政策」が上からなされれば、下からは新規貸し出しのセーブという「対策」が始まること間違いない。中国政府と中国民衆の関係に似ている。
 同じことは最低賃金制にも言える。最低賃金をアップすれば新規雇用が減るだけで、労働者の利益にならない。

9/17/2009

チルドレンは投票マシーンの一票になってはいけない

 民主党は308議席(選挙後民主会派で311)の大躍進を遂げ、新人議員が大量に生まれた。小沢チルドレンなどと揶揄されるが、一人一人の議員はすべて平等の権限を持つことは忘れてはならない。
 小沢幹事長は次回の選挙で再選されることを目標に議員活動を心がけて欲しいと注文をつけた。そのためには地道な選挙区活動をというのだろうが、少し違うのではないだろうか。
 間接民主主義の代議員制度では、所属の党は投票での勘案事項だろうが、あくまで議員そのものを選出することになる(比例代表は別だが)。任期中の政治行動はその代議士の判断にすべてを任せることになる。それが間接代表制ということだ。今回の選挙では、かなりの選挙区で、候補者本人のことよりも所属政党がどこかで、投票した有権者が多かったはずだ。鳩山民主党(小沢氏)に議決マシーンとして308議席(票・・・衆院での議決票)を預けたのだと。でも、これは違う。任期中にいろいろなこと(政局)が起こるかもしれない。そのときは、間接代表の議員個人個人が判断することになる。党議拘束という制度があるが、議決は本来は個別の議員の判断によるという基本からの特例として言っているに過ぎない。
 新人議員は与野党問わずその判断が一人の政治家としてできるようにならなければならないし、それができるようになったかが、次回の当選の可否につながるのではないか。

9/16/2009

内需だけで日本経済は立ちいかない

 今回の経済危機の教訓で、外需に頼ることなく内需対応の強い経済を作るべきだ、というのがあった。正論だが、行き過ぎて内需だけでは日本経済が成り立たない。原材料とくに石油、食料などはほとんどを輸入に頼らなくてはならないから、少なくとも、その分だけは外貨を稼ぐ、つまり、輸出をしなければならない。日本人は物づくりが得意、というが、物づくりしかできない。その典型が自動車だ。
 その自動車産業ほかの製造業への登録型派遣を禁止する考えという。結果は、派遣労働者の大量失業と、自動車工場の海外逃避だろう。内需を盛んにするためにも、子ども手当など各家庭に直接ばらまくことが行われるが、金持ちはそのまま貯金してしまい追加需要にならないし、たとえ、消費が盛んになったとしても、上記の理屈で、内需だけでは日本経済がたちいかない。
 福祉は貧困層へあるいはセーフティネットとして限定したらどうか?経済的に自立している大部分の国民に配るのは、選挙対策のばらまきそのものだ。野党自民党も。
 内需の最終は個人消費だが、豊かな日本でもう買う「もの」がない。自動車だって、長持ちするから、いずれは消費が飽和することは自明だった。それが、今回の経済危機をきっかけで、表面化したに過ぎない。地震が地中の地盤のひずみがたまった結果、あるときに一時に解放されるのと似ている。ひずみがたまっている(特定の消費は永遠に続かない)ことに気づくべきだった。

9/15/2009

世論はnoisy minorityばかりでない(八ツ場ダム)

 八ツ場ダム中止の民主党マニフェストに対し、群馬県の地元あるいは関連都県から続行要求の声が高くなってきた。いままでサイレントマジョリティだったものが、中止の危機ににわかにノイジーマジョリティに変わったと言うべきか。
 民主党は政権交代のためにあらゆる努力をしてきた。この八ツ場ダム反対運動の声を取り入れたこともそうだろう。ノイジーマイノリティの声を聞きすぎると失敗する。関係者で投票すれば、マジョリティが勝つ。個別の施策で、おのおののマジョリティ意見を無視することは政権党としてはできないだろう。

9/14/2009

子ども手当の直接支給は反故にすべき

 民主党の林久美子参議院議員(滋賀地方区)がTVで、子ども手当を親に支給すると子供のために使わず、親の遊興費(パチンコ)などに無駄遣いされるのでは、と質問されたときの答えにびっくりした。「そのような場合は支給をストップする」と。
 そうなると、子ども手当を支給される親は遊興が一切できなくなる。お金に色はついていないから、子ども手当分の26,000円/月が元々あった遊興費にか子供に新たに増加して使われたかは判定できない。そんなに心配だったら、直接支給はやめて、幼稚園とか小学校への助成にしたらよい。授業料減額などの形で、親には確実に助成となるし、無駄遣いされる恐れもない。それでも、理論的には無駄遣いが可能だ。いままで子供に使っていた費用を子供への助成で浮かし、その分を遊興費に回したら、子供への助成が遊興費に回ったと言えるのではないか?
 直接支給には莫大な手間がかかることは麻生内閣時の定額給付金さわぎで証明済みだ。それは景気対策の一環(待ちきれずにお祭り騒ぎになったことが景気を支えた)で1回限りだったから許されたが、子ども手当は永続的なものだろう。個人に支給する不合理性を学んだはずなのに。選挙が終わったので、ばらまきの約束は反故にしたらどうか?

9/11/2009

核密約は自民党政権の汚点

 日米両国での米軍による日本国内核持ち込みの際の「核密約」が明るみに出されようとしている。民主党に政権が移り、日本共産党ともその方向で一致したという。
 この動きは正しいのではないか?そもそも国民に秘密の外交などあってはならない。しかし、明るみに出してからの結論は民共両党とは違う。非核三原則の作らず持たずはまあ良いとして、持ち込ませずには核抑止力を期待する日本としては無理があった。せいぜい非核二原則までだった。ときの自民党政府が国会あるいは世論を乗り切るために「方便」を使ったとしか思えない。「持ち込ませる」理由があるなら、それを十分に説明して、その場を乗り切るべきだった。歴代自民党政府の汚点ではないか?

9/10/2009

懲りないオバマ教信者

 鳩山次期首相はオバマ大統領と電話会談し、日米とも民主党が勝ちチェンジされた、とよいしょ的なことを話したらしい。米大統領は迷惑なことだったろう。同じ民主党を称していても、また、政権をチェンジしたには違いないが、内実は国が違えば非なるものを知らないらしい。オバマ人気にあやかろうというのもさもしい限りだ。日米の国益を考えて行動して欲しい。オバマ大統領がいざとなったとき日本の民主党のことを優先するはずがない。
 同じことは秋葉広島市長にも言える。原爆投下犯人の米国の大統領であることをいっときも忘れてはならない。オバマが来日しても広島への訪問には難色を示している。米国民が許さないだろう。
 戦後、占領司令官のマッカーサーの人気が被占領民の日本人の間で高まり、天皇以上の存在になった。人質(日本人)が誘拐犯(米国)に情が通じ合うようになるという、ストックホルム症候群に似ている。

9/08/2009

マニフェストすべてを実行する必要なし(八ツ場ダム中止)

 民主党(予定)政権のマニフェスト実行に早くも黄信号がともっている。八ツ場ダム建設中止はできない公約だった。同じダム中止公約の熊本県川辺川ダムは地元の知事が中止を求めている。ダムによる治利水の対象となる球磨川は熊本県の一部地域の人吉盆地のみを流域とするから、県知事と人吉市長が反対なら、当然国土交通省も中止せざるを得ない(中止してよい)。八ツ場ダムは地元群馬県と利害都県知事ほとんどが中止に反対だ。
 マニフェストをすべて実行する必要はないのではないか?もともと選挙に勝つためのばらまきも含んだものだ。自民党政府の施策に反対するものはすべてマニフェストに入れた、という票目当てだったものだ。そこまでしなくても勝てたのに。地元とよく相談して、その結果として、中止のマニフェストを撤回したらよい。差し止め裁判結果も地裁レベルでは中止させる理由はない、とするものだ。

9/02/2009

八ツ場ダムは国と契約を結んだ(川原湯温泉の地元)

 群馬県の吾妻川に国土交通省が建設中の八ツ場ダムに対し、民主党のマニフェストでは建設中止となっている。ダム建設に必要な道路鉄道の付け替えはすでにおわり、水没予定の川原湯温泉などの移転も進み、ダム本体の工事を残すのみの「概略完成」の状態だ。ここで中止すると、関係都県など費用負担者への補償とか、周辺整備の今後の費用などの追加費用が残事業費より多くなると言う。つまり、やめる方が金がかかるのだ。
 地方のことは地方で決めるべきだ、と民主党も主張する。地元の群馬県のみならず、東京都、埼玉県など「中止には絶対反対」だから、地方重視なら中止はできない。
 ダム中止反対の地元代表である川原湯温泉の経営者がつぎの名言を吐いていた。「地元の個人個人は国と契約を結んだのであって、党と結んだのではない」(政権党が代わったのは国内部の都合だろう)。民主党には国の責任として、このことに当たって欲しい。

9/01/2009

自民党は郵政民営化で負けた(今回は)

 自民党が負けたので、民主党政権になったのだそうだ(民主党の政策が必ずしも受け入れられたのではない)。そうなると、自民党は出直しを期待されていることになる。民主党鳩山代表も二大政党の一翼となる自民党の復活を希望している。これは友愛精神?
 敗退の理由は複数ある。民主党との対立点に絞りそれらを検証するに、すべてを勝者・民主党の主張(マニフェスト)に合わせ修正したのでは民主党そのものになってしまう。それに有権者も民主党のすべてを了としたわけではあるまい。次回勝利のための反省点を一個に絞るとすれば、それは、四年前の総選挙で一点対立だった「郵政民営化」(の方法論)にあるのではないか?小泉首相から替わって三人目の麻生首相になって(郵政民営化のやり方に)「賛成ではなかった」とやっと言うようになった。そのとき自民党衆議院議員が小泉首相の政策に賛成で選ばれたのだから、自民党の政策を変えるまでには至らなかったのだろう。せめて、昨年の麻生総裁を選んだ総裁選での政見に加えていれば、政策変更の名目はたったのに。
 鳩山次期首相は郵政民営化(の方法論とかそれに代表される弱肉強食の経済社会政策)に反対どころか、原因となったグローバリズムそのものにも異議があるらしい。新自由主義経済に対しては保守そのものだ。新生自民党になるには、行き過ぎた経済社会の動きを引き戻すような政策を打ち上げるべきだろう。